研究概要 |
小細胞肺癌で高頻度に認められる細胞接着分子TSLC1/ CADM1の特異的スプライシング・バリアントの過剰発現に注目し、その病理学的実態を把握し、その機能を明らかにすることを目的とし、以下の実験を行った。 1、小細胞肺癌におけるTSLC1の過剰発現の実態の把握 17種類の小細胞肺癌細胞株におけるTSLC1の発現量をRT- PCR法及びウエスタンブロッティング法により解析した。その結果、浮遊増殖性を示す12種の細胞ではTSLC1の発現が認められたのに対し、付着性増殖を示す3種の細胞はTSLC1の発現がほぼ見られなかった。また細胞肺癌組織における免疫組織解析では34例中9例 (26%)で、TSLC1の高発現が認められた。 2、小細胞肺癌特異的スプライシング・バリアントの実態の把握 TSLC1には細胞膜直上のエクソン8A, 8B, 8Cを含む多様なスプライシング・バリアントが存在し、上皮では8A型、脳・神経では8 (- ) 型、精巣では8B型、8A+ 8B型が発現する。小細胞肺癌および非小細胞肺癌細胞株、マウス各臓器におけるTSLC1のスプライシング・バリアントの発現様式をRT- PCR法及びSSCP法を用いて解析したところ、TSLC1を発現する全ての小細胞肺癌12例では、生理的に精巣でしか認められない8A+8B型特異的スプライシング・バリアントが、8A型と共に認められた。また、N- グリコシダーゼ処理により糖鎖修飾を切断してウエスタンブロッティングを行うことで、蛋白質レベルでも特異的スプライシング・バリアントが相当母発現していることが確認された。 3、スプライシング・バリアントの小細胞肺癌細胞株における意義の解析 TSLC1の発現がみられない壁付着性の小細胞肺癌細胞株に8A+8B型及び8A型の全長TSLClcDNAを外因性に発現する安定細胞株を作成した。現在、その形態変化、増殖能等を検討している。
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