研究概要 |
本研究では生体肝移植後長期経過例における原因不明の線維化を示す例について、グラフトの老化・寿命を示しているのではないかという仮説をfluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて検証することを目的としている。10年以上の長期観察例約200例のうち、既知のグラフト不全の群(慢性拒絶など)とプロトコール肝生検で組織学的異常を示す群との2群に分け、該当症例は各々約20例であった。移植時のドナー肝(正常肝)を起点に、経過中の数回の生検も含め、経時的に移植肝組織の肝細胞に焦点を当て、テロメア配列特異的PNAプローブ(DAKO)を用いてFISHを施行、さらにconfocal laser scanning microscopy(Biozerd, Keyence)を使用し、標本上の蛍光シグナルの撮影を行った。H20年度に購入した米国モレキュラーデバイス社の画像解析ソフトを用いて、撮影した画像上で各標本における個々の肝細胞核のテロメアの光度を定量化した。FISHの手法および画像解析の条件設定についてはH20年度内に確立し、対照として約30例の正常肝(ドナー肝)の加齢によるテロメア長の短縮率を算出した。さらに長期生存例における移植後の合併症時の生検や肝機能異常のないプロトコール生検にて、経時的なテロメア長の解析を進めている。現在のところ、肝移植後早期にドナー年齢に関係なく、移植時の虚血、再潅流障害によると考えられる急激なテロメア長の短縮がみられる。また、グラフトに既知の慢性拒絶反応などのグラフト障害が加わった例では対照例の加齢によるテロメア長の短縮率よりもテロメアが短縮している。さらに長期経過観察例でも解析を進め、グラフトのテロメア長との関連、予後につき知見を蓄積したい。
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