研究課題
日本人の胃癌発症にはHelicobacter pylori(H.pylori)感染性胃炎が深く関与している。しかしH. pyloriによる胃炎は胃癌の少ない欧米人にも高頻度にみられることから、欧米人に感染するH.pyloriと本邦に蔓延しているH.pyloriの違いが注目されてきた。最近になってH.pyloriが有する毒性因子CagAの構造の違いが、発癌性の差をもたらすものと推測されている。これまでに我々は強毒型である東アジア型CagAを有するH.pyloriを特異的に認識するポリクローナル抗体の作製に成功しており、胃生検組織において東アジア型H.pyloriを簡便に検出する方法の開発に成功し、報告してきた(Can Sci.2007)。今回、開発した強毒型東アジア型CagA抗体を用いた免疫組織化学的診断法の有用性を明らかにするためにより多数例(149例)で検討を行い、有用であることを証明し論文として報告した(Pathol Int 2008)。また、東アジアにおけるH.pylori毒性因子と胃癌発症頻度の関係についての総説を発表した(J Med. Microbiol., 2008)。本研究で、東アジア型CagAタンパク質を簡便に検出するELISAキットの作製と、血清・尿中に含まれる抗東アジア型CagA抗体を検出するELISAキットの作製を目指しており、キット作製に必須な、東アジア型CagA特異的モノクローナル抗体の作製に成功した。ピロリ菌抽出液を用いた東アジア型CagA蛋白質を検出するELISAシステムの開発に成功し、これらの研究成果を論文として、A novel diagnostic monoclonal antibody specific for Helicobacter pylori CagA of East Asian type. APMIS 2009 ; 117 : 893-9.に発表した。
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Dig Dis Sci. 55
ページ: 89-93
Clin Microbiol Infect. (In press)
APMIS 117
ページ: 893-899