研究概要 |
肺癌の薬物療法は分子標的治療薬へと移行しつつあり、遺伝子変異などによる肺癌の層別化が要求されている。近年発見されたALK転座肺癌に注目し、EML4-ALK肺癌の検出方法、新たなvariant の検出、臨床病理学的特徴・遺伝子学的特徴の解析、他のALK 転座肺癌の検出を試みた。cDNA スクリーニングによりEML4 - ALK variant3 を発見した。EML4 とALK の全てのin-frame fusion を検出するmultiplex RT-PCR 系を構築し、あらたなEML4-ALK variant 4 , variant 5 を発見した。臨床病理学的特徴を統計学的に解析するとともに、TTF-1免疫染色によりcell lineage を調べ、EGFR,KRAS, P53 の遺伝子変異の有無を調べた。11人のEML4-ALK 肺癌患者のうち4人が50歳以下の発症であるなど、EML4-ALK肺癌は若年者に多くみられた。また非・軽度喫煙者に多くみられた。TTF-1免疫染色は全例陽性・または部分陽性であり、TTF-1陽性cell lineage であり、非・軽度喫煙者の癌として矛盾しない結果であった。病理組織学的にEML4-ALK肺腺癌は中〜低分化のものが多く、acinar patternが特徴であった。遺伝子学的にはEGFR変異、KRASと相互排他的であり、P53 変異も稀であった。また新たな免疫染色法であるintercalated antibody-enhanced polymer (iAEP)法を開発し、新たなEML4-ALK variant であるvariant 6, variant 7 を検出した。さらにinverse RT-PCR法により新たな転座遺伝子KIF5B-ALK を発見した。
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