研究概要 |
現在、癌の薬物療法は分子標的治療薬へと移行しつっあり、最近の肺癌研究の大きな発見はEGFR変異とGefitinibに関するものである。EGFR変異を有する肺癌は分子標的治療薬であるGefitinibが有効で、治療に直結する大きな発見であった。その後、EGFR変異を有するものの特徴的な臨床所見および病理組織像が明らかになってきた。これは肺癌の個別化の大きな一歩であり、遺伝子変異の有無、臨床病理学的所見により治療有効性の有無が判明し、臨床的にも大きな貢献を果たすこととなるに違いない。 2007年の8月、肺非小細胞癌の一部はEML4-ALKという染色体転座を有していることがNature誌に発表(Soda et al.Nature 2007)され話題となった。EML4-ALK転座肺癌は非常に強い癌原性を持つALKが活性化状態にあるため、活性化したALKを抑制する分子標的治療薬に高感受性であることが期待されている。このように発癌メカニズムがわかると、その発癌経路を標的とした治療が可能となるため、臨床的にも非常に重要である。 EML4-ALKのvarialltは当初V1,V2のみ報告されたが、我々は、cDNAスクリーニング、multiplex RT-PCR、新規免疫染色法であるintercalated antibody-enhanced polyper法などにより新規variantであるV3-V7を検出した。さらにinverse RT-PCR法により新規転座遺伝子KIF5B-ALKを発見した。またEML4-ALK転座を有する肺癌の臨床病理学的特徴を明らかにした(less-differentiated adenocarcinoma with mucinous acinar structure,若年者,軽・非軽度喫煙者,EGFR変異・KRAS変異と相互排他的)。
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