研究概要 |
小型肺腺癌の中で根治術後に再発する腫瘍の診断基準は確立されていない.肺葉切除後の病理学的検索にて最大径2cm以下の原発性肺腺癌と確認された53人の患者(男性28人,女性25人;16人は再発あり)から術後再発の有無を予測する判別式(logistic model)を作成した.判別式は臨床病理学6因子(性別,血管浸潤,リンパ管侵襲,組織亜型,乳頭癌成分および喫煙歴)を独立変数としているが,その正分類率は91%であった(p<0.0001).肺腺癌においては同一のstageに分類されても予後の異なる群が含まれていることは広く認識されており,その分類を行うために様々な報告が見られる.最近,少数のmRNAや蛋白の発現パターンから非小細胞性肺癌の術後の予後を予測することが可能であるとの報告が複数見られる.これらも非常に信頼性の高い研究であるが,これらの研究で同定された複数の分子を用いて臨床の現場で予後予測を行うことは,当面困難と思われる.我々のmodelは臨床現場で情報を得ることが十分可能な6つの因子から構成されており,直ちに実施可能であることを強調したい.このmodelの妥当性を検証するため他院で手術された肺腺癌患者を対象に上記した判別式で術後の再発予測を行い,実際の臨床データと比較検討する検証実験を現在行っている.
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