研究概要 |
小型肺腺癌の中で根治術後に再発する腫瘍の診断基準は確立されていなかった。肺葉切除後の病理学的検索にて最大径2cm以下の原発性肺腺癌と確認された28人の男性患者(15人は再発あり)から術後再発の有無を予測する判別式(logistic model)を作成した。判別式は臨床病理学5因子(血管浸潤、リンパ管侵襲、組織亜型、乳頭癌成分、喫煙歴)を独立変数としているが、その正分類率は87%であった(P=0.0004)。このmodelの妥当性を検証するため他院で手術された肺腺癌の男性患者11人(4人は再発あり)の臨床データとlogitic modelにより予想された再発の有無を比較すると、統計学的有意差は得られなかったが、その多くは正しく分類された(9/11人,82% ; P=0.0606)。よって今回作成されたmodelの有用性が示唆された。ただし本研究では解析した28人の女性患者で再発した症例数が少なく判別式作成に至らなかった。以上の研究結果から小型肺腺癌の術後再発を規定する最大の因子は脈管浸潤の有無であったので、肺腺癌組織の脈管内に浮遊する癌細胞と低接着性培養皿で浮遊培養した肺腺癌細胞株を対象に新たな実験を行った。その結果1)肺腺癌組織の脈管内に浮遊する癌細胞は活性化型Srcを発現していること、2)浮遊培養され活性化型Srcを発現した4つの肺腺癌細胞株にSrc阻害薬を添加しSrcの活性を低下させるとアポトーシスに陥った。よって脈管浸潤した肺腺癌細胞をアポトーシスさせるにはSrc阻害薬が有効であることも併せて明らかにした。
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