エピジェネティクスを担う因子として、近年ポリコーム群タンパク質が注目を浴びており、細胞増殖や分化、幹細胞の維持など様々な生命現象に関与していることが明らかになってきた。本研究ではポリコーム群のなかでもL(3)MBTと呼ばれる特徴的なmbt(malignant brain tumor)ドメインを有する因子について、その生体内での機能を明らかにするとともに、生化学的解析も行い、将来的にはこれらを標的とした治療薬の開発を目指す。本遺伝子のnull-ノックアウトマウスは胎生致死である(申請者ら未発表データ)。そこで、今回我々は、コンディショナルノックアウトマウスを作製し、本遺伝子の発現の高い臓器を中心に分子レベルとフェノタイプ双方から解析し、生体の機能や細胞レベルでの分化、増殖、染色体での機能や、特に発癌における作用を解明することを研究項目とする。まず、コンディショナルノックアウトマウスを作製するにあたり、DNAコンストラクトを作製した。完成したコンストラクトをES細胞にエレクトロポレーションにより導入し、ネオマイシンにてセレクションを行った。スクリーニングはPCR、シークエンスにより、相同組換がおこっているかどうかを確認した。これをマウスの胚盤胞に打ち込むことにより、キメラマウスを作製することを試みた。その結果、キメラマウスが生まれたが、非常に少ない数であり、さらに最終的には死亡してしまった。原因としてES細胞の質の問題が考えられたため、細胞を変更して、再度セレクションをおこなった。これらのクローンを今回は注入数を7-8個と10-15個の2グループに分けたところ、後者からは産子数も少なく、キメラが生まれなかった。しかし、前者からはハイ・キメリズムのマウスが生まれた。
|