研究概要 |
近年、神経幹細胞移植実験は数多く発表され、臨床応用への研究も熱心に行われている。神経幹細胞移植はParkinson病、脳梗塞、ALS, ハンチントン病などの難病神経疾患の治療にますます盛んに適用されることが予想される。その際、これまで臓器移植でサイトメガロウイルス(CMV)感染が問題になってきたように神経幹細胞移植においてもCMV感染が問題になる可能性がある。 CMV再活性化のメカニズムは多くの研究者の注目を集めるところであり、現在世界各地で研究がすすめられている。しかしその病理機序はいまだ不明な点が多く、細胞の種類によってそのメカニズムは異なると思われる。われわれは神経幹・前駆細胞においてシクロスポリンAがcyclophilinを介してCMV再活性化を抑制することを世界ではじめて発表し、cyclophilinがCMV前初期遺伝子プロモーターにおけるクロマチンリモデリングに関わる可能性を示唆した。これらの結果は2007年9月にJournal of Virology(J Virol. 81(17) : 9013-23)に発表し、現在そのメカニズムを解明するべく、大脳や神経幹細胞でのin vivo, in vitroにおけるchromatin remodeling機構を中心に研究をすすめている また現在は、ES細胞を用いたCMV感染実験も行っている。ES細胞はCMV感染感受性を示さない一方、神経幹・前駆細胞、線維芽細胞においてはCMV感染感受性を獲得することを明らかにしている。CMV感染感受性は細胞の分化過程に依存しており、その機序の一つはCMV前初期promoter活性の違いに依存している可能性が高い。その仮説をもとに、現在CMV感染におけるクロマチンリモデリングを中心に研究をすすめている。
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