研究概要 |
われわれは神経幹・前駆細胞においてシクロスポリンAがcyclophilinを介してCMV再活性化を抑制することを発表し、cyclophilinがCMV前初期遺伝子プロモーターにおけるクロマチンリモデリングに関わる可能性を示唆した。またES細胞はCMV感染感受性を示さない一方、神経幹・前駆細胞においてはCMV感染感受性を獲得することを明らかにしている。CMV感染感受性は細胞の分化過程に依存しており、CMV前初期promoter活性の違いに依存している可能性が高いと予想した。その仮説をもとに、ES細胞を使ってCMV感染におけるクロマチンリモデリングの研究をすすめていたが、実験の過程でES細胞はCMVが入りにくい細胞であることがわかり、ES細胞のCMV感染抵抗性の機序を詳細に解明することとなった。実験の結果、ウイルス増殖・IE蛋白発現・ie1 mRNA発現はMEFよりESで有意に低かったが、ESへのtrichostatin A+forskolin処理で感染感受性の軽度増加がみられた。hEF promoterはtransfectionではESで活性が高かったが、hEF promoter-GFP変異MCMV感染でのhEF promoter活性はESでほとんどみられなかった。ESではMEFと比較してウイルスゲノムの核内移行はrealtime PCRにて約1/20と低下し、in situ hybridizationでも核内のMCMV genomeシグナルはESではMEFと比し有意に少なかった。またheparan sulfate, integrinβ1,核膜孔数はESではMEFより低下していた。ESでのMCMV感染感受性低下はheparan sulfateやintegrinβ1発現量,核膜孔数やpromoter活性に依存している可能性が考えられた。この結果をふまえて現在はcyclophilin A knockout mouseを購入し、CMV感染とcyclophilinとの関係をウイルスの細胞内entryを含めて多角的に検索している。
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