Apc/Smad4複合変異マウスは、多くの大腸癌で不活性化しているApc、Smad4両遺伝子に変異を持ち、腸管に著しい浸潤を伴う腺癌を発症する。このマウスの腺癌におけるc-KITの発現を免疫染色で検出したところ、腫瘍上皮細胞に強い発現が見られること、c-KIT陽性腫瘍細胞は浸潤先端部にむかって高頻度に認められることが分かった。またc-KITのリガンドであるSCFの発現は間質細胞に認められ、腫瘍細胞自身には発現していないことが分かった。 抗癌剤投与によるc-KIT陽性癌細胞数の変動を解析する目的で、9週齢のApc/Smad4マウスに5-fluorouracil(40mg/kg)を腹腔内投与した。過去の報告に従った5日間連続投与/9日間休止のサイクルを3回繰り返す方法では多くのマウスが死に至るが、サイクルを1回にすると一部の腫瘍で退縮像が見られることがわかった。退縮の見られた腫瘍においてc-KIT陰性癌細胞は顕著に消失していたが、腫瘍基底側のc-KIT陽性細胞は殆ど消失していなかったことから、c-KIT陽性癌細胞が抗癌剤(5-fluorouracil)に対して抵抗性を持つ可能性が示唆された。
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