(1)LKB1欠失によるc-Junの発現上昇の機序解析 LKB1欠失によるc-Junの発現上昇の機序をヒト大腸癌HCT116細胞にLKB1に対する特異的siRNAを用いて解析を行った。その結果、LKB1を特異的siRNAによりLKB1をノックダウンした細胞では、c-Junの発現量が上昇していることがわかった。また、c-Junと相互作用のあるGSK3βのリン酸化がLKB1ノックダウン細胞で上昇していることから、LKB1のノックダウンは、GSK3βの活性を抑制することが示唆された。さらに、野生型LKB1をLKb1-/-繊維芽細胞に人為的に誘導させるとGSK3βのリン酸化が低下した。このことからLKB1がGSK3βの活性を制御し、その結果c-Junタンパク質を安定化させることにより、転写非依存的にc-Junの発現を抑制していることが示唆された。 (2)LKB1欠失により出現する肝臓の未分化細胞の解析 Prominin-1陽性は肝臓において未分化細胞マーカーであることが示唆されている。LKb1^<+/->マウスの前癌病変でProminin-1に陽性であることから、免疫不全マウス(NOD/SCID)に前癌病変を移植したところ、前癌病変でも移植可能であることがわかった。また移植病変部の組織像をHE染色により観察すると、前癌病変の特徴を保持していることが確認された。 (3)LKB1標的因子の解析 LKb1^<+/->マウスで発症する前癌病変、肝細胞癌では、正常肝臓で認められる索状構造が失われており、LKB1は細胞極性、細胞骨格、細胞の運動性に何らかの役割を持つ可能性が示唆されている。細胞運動性、細胞増殖に重要な役割を果たすことが知られているPAK1シグナル伝達経路をLKB1が抑制している可能性を示した。
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