BXSB♂マウスはYaa遺伝子の影響により、高度なSLE病態を発症する。BXSBマウスは、抑制型IgG-Fcレセプター(FcγRIIB)をコードするFcgr2b遺伝子のプロモーター領域にAP-4結合領域の欠損を伴う多型を有しており、この多型を正常B6マウス型に入れ替えた♂BXSB. IIB^<B6>マウスでは、SLE病態が完全に抑制された。一方、Yaa遺伝子を持たず、Fcgr2b多型のみを有する♀BXSBマウスにはSLE病態が認められない。しかしながら、Yaa遺伝子を持たない♀(NZW x BXSB)F1マウスには、高度のSLEが発症する。NZWマウス自身はSLEを発症しないので、BXSBおよびNZWマウス由来の遺伝子の相補作用で病態発症に至ると考えられる。 今回は、(NZW x BXSB)F1およびBXSB. IIB^<B6>マウスをNZWと交配した(NZW x BXSB. IIB^<B6>)F1マウスを作製し、これらのF1♀マウスの病態を比較することで、Yaa非存在下でのSLE病態に対するFcgr2b遺伝子多型の影響を解析した。その結果、前者のF1マウスに比べて、後者のF1マウスでは、腎糸球体の免疫複合体沈着による腎炎症は高度に抑制され、IgG抗DNA抗体産生および脾腫も高度に抑制された。脾臓の組織学的解析から、胚中心の自然形成が前者のF1マウスで著明に亢進していたが、後者のF1では高度に抑制されていた。次に、B細胞上のFcγRIIB発現レベルを比較したところ、Fcgr2b遺伝子多型を正常型に入れ替えることで、胚中心活性化B細胞上のFcγRIIB発現レベルが約5倍増強した。一方、非活性化B細胞上での発現レベルに差は見られなかった。また、FcγRIIB発現レベルの低下に伴って、B細胞の形質細胞への分化が促進された。従って、自己免疫型Fcgr2b遺伝子多型は、活性化B細胞上でのFcγRIIB発現、レベルを低下させることで、B細胞の活性化ならびに分化を亢進させることが示された。現在、B細胞以外の免疫担当細胞の機能に与える自己免疫型Fcgr2b遺伝子多型の影響について解析を行っている。
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