B細胞の抑制分子であるFcγRIIBをコードするFcgr2b遺伝子のプロモーター多型が、SLE病態に対する影響を解析する目的で、SLE型Fcgr2b遺伝子多型(Ly17.1)を正常B6型多型(Ly17.2)に入れ換えたBXSB.IIB^<B6>マウスを樹立し、(NZW x BXSB)F1および(NZW x BXSB.IIB^<B6>)F1雌マウスを作製して、SLE病態を比較した。その結果、前者のF1マウスに比べて、後者のF1マウスではSLE病態が有意に抑制されていた。この結果からSLE型Fcgr2b遺伝子多型はSLE発症に関わる重要な遺伝要因であることが示された。 両F1雌マウスのB細胞上のFcγRIIB発現レベルを比較したところ、Fcgr2b遺伝子多型を正常型に入れ替えることで、胚中心活性化B細胞および形質細胞におけるFcγRIIB発現レベルが約5倍増強していることが示された。一方、非活性化B細胞上での発現レベルに差は見られなかった。胚中心B細胞の形成及び形質細胞への分化にSLE型Fcgr2b遺伝子多型が必要か否かを調べるために、BXSBとBXSB.IIB^<B6>マウスの混合脾臓細胞を、T細胞およびB細胞を欠損するB6.scidマウスに移植する実験を行った。移植3カ月後に、抹消血中のB細胞がBXSBとBXSB.IIB^<B6>の何れに由来するかを、抗Ly17.1抗体および抗Ly17.2抗体を用いて解析した。その結果、両マウス由来のB細胞の存在が認められたが、抗Ly17.2抗体で染色されるBXSB.IIB^<B6>由来のB細胞比率が、抗Ly17.1抗体で染色されるBXSB由来に比べて、約3倍高いことが明らかとなった。活性化B細胞は、末梢血中への移動が抑制されるので、SLE型Fcgr2b遺伝子多型を発現したB細胞が特異的に活性化されている可能が示唆された。また、このB6.scidマウスには、高度な血中抗DNA抗体価が見られた。今後、このB6.scidマウスの脾臓細胞を用いて、胚中心形成B細胞および形質細胞が、Ly17.1あるいはLy17.2のいずれを発現するかを解析し、Fcgr2b遺伝子多型のB細胞分化における役割を明らかにする実験を予定している。
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