研究課題
成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia : ATL)は、ヒトTリンパ球指向性ウイルスタイプ1(Human lymphotoropic virus type 1 : HTLV-1)の感染によって引き起こされる予後不良の腫瘍性疾患で、我が国では将来的に5~10万人がATLを発症すると予測されているが、未だ有効な治療法が見つかっていない。本研究は、長谷川らが開発したATLのマウスモデルを(Nat Med, 12(4) : 466-72. 2006)を用い、この疾患の発症に深く関わっているとされているNFkB経路を上流で選択的に阻害する新規薬剤を使った治療実験を行い、臨床へ還元できる有効かつ安全な新しい治療法を開発することを目的としている。平成21年度は、マウスモデル白血病細胞(マウスATL細胞)に対する薬剤の作用メカニズムについて詳細な検討を行なった。EMSA法では薬剤処理でNFKB/DNA複合体の形成が特異的に抑制されることが明らかになった。薬剤処理で、Bax、Bnip31、Cideb、Atf5などのアポトーシス誘発因子の発現が充進し、Bcl2、Mcl1、Hells、Naip2などのアポトーシス抑制因子の発現が減少していることがPCR array法で明らかになった。ウエスタンブロット法では薬剤処理によりCaspase 3および9の活性化が3時間後から観察されるのに対し、Caspase8の活性化は12時間後まで観察されなかった。さらにCaspaseの活性化と平行してBcl2の発現が著明に減少していた。以上の結果からNFkB経路の抑制を介してBcl2発現量が減少することで、ミトコンドリア経路を介したアポトーシスが誘導される薬剤作用機序が考えられた。平成20,21年度の実験結果から、新規薬剤によるNFkB経路の抑制は、ATL治療の標的となり得るものと考えられた。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
Virology 398
ページ: 273-9
Intern Med 49
ページ: 491-5
Blood 114
ページ: 2961-8
Oncogene 28
ページ: 3723-34
J Med Virol 81
ページ: 1951-8