研究課題
まず、SAMP10マウスに見られる加齢性神経変性が骨髄内骨髄移植により治療できるかについて検討した。GFP遺伝子導入C57BL/6マウスの骨髄を7-10ヶ月齢のSAMP10マウスに骨髄内骨髄移植し、14ヵ月齢になるまで飼育した後、免疫系、全身老化度、記憶学習試験(モリス水迷路)、脳萎縮、神経変性について調べた。その結果、移植が成功したマウスについては、ドナー型・レシピエント型を共に自己と認識し寛容する新しい免疫系が再構築されたものの、無処置の14ヵ月齢SAMPIOと比べて、全身老化度、記憶学習能、脳萎縮、神経変性に改善は見られなかった。また、レシピエント脳内におけるドナー由来細胞の分布を移植1ヵ月後と比較した結果、ドナー由来細胞は時間依存的にレシピエント脳内に入ること、入ったドナー由来細胞はミクログリアに分化すること、入る場所は限局されており、血管周囲・脳室周囲・脳幹・脊髄には入るが、大脳皮質・海馬には入らないことを明らかにした。これらの結果から、この方法による加齢性神経変性の治療は困難であること、その原因としてこの方法では海馬のミクログリアが置換されないことが考えられた。次に、骨髄由来細胞が全身や脳内のどの細胞にどんな時間経過で置換されるかを検討するため、GFPマウスをドナー、若齢C57BL/6マウスをレシピエントとした骨髄内骨髄移植を行い1,4,8ヵ月後に固定した(現在1,8ヵ月後の標本は作製中)。移植4ヵ月後に固定したマウスを観察した結果、ドナー由来細胞は血管周囲・脳室周囲に分布しミクログリアに分化した。この結果から、脳の血管周囲・脳室周囲には生理的条件下でも骨髄細胞の供給があること、一方脳幹・脊髄はSAMP10マウス特有の神経変性病態に応答して供給されると考えられた。
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