これまでに我々はトロホブラストとマイオブラストの分化過程における細胞融合をCNN3が負に制御することを見いだしてきた。本年度はCNN3キナーゼの同定と細胞融合特異的に駆動されるシグナルカスケードの探索を目的とし解析を進めたところ、BeWo(トロホブラスト)およびC2C12細胞(マイオブラスト)においてERK1/2およびROCK1/2がin vitroでCNN3の293番目のセリンをリン酸化することを見いだした。さらにC2C12細胞においてROCKをノックダウンした細胞ではCNN3の293および296番目のセリンのリン酸化が抑制されており、それに伴い筋管形成も抑制されていることを明らかにした。このことは細胞内においてROCKがCNN3のキナーゼであり細胞融合による筋管形成を制御するシグナルカスケードとして存在していることを示している。またCNN3の二カ所のリン酸化部位(Ser293及びSer296)をアラニンに置換あるいはC末のリン酸化領域を欠失した変異体を発現させたところBeWo・C2C12細胞共に細胞融合を抑制し、反対にアスパラギン酸置換体を発現させた場合は細胞融合が促進する傾向を見いだした。さらにCNN3とアクチンの会合・解離に関して解析を進めたところ、CNN3のリン酸化レベルに応じてアクチンとの会合を制御していることも見いだした。これらのことからCNN3の細胞融合抑制メカニズムとしてCNN3の酸性アミノ酸に富むC末領域のリン酸化によるアクチン細胞骨格の再編成を調節することが示唆された。
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