我が国において、Aspergillus属菌(主にA.fumigatus)が起因菌であるアスペルギルス症は増大の一途をたどっている。A.fumigatusを初めとする糸状菌の宿主認識機構の研究は途上にあり、未解明の部分が多く残されている。さらにAspergillus属菌はその生育過程において、分生子から膨化分生子、そして菌糸へと形態を変える。その形態と共に表面構造も変化することが知られている。しかしながらこのような形態変化を考慮に入れた研究は非常に少ない。これらの解明は真菌認識機構を明らかとするだけでなく、治療・創薬への応用が期待される。 そこで本研究課題では、A.fumigatus各形態を認識する宿主側受容体の探索・同定・機能解析を目的として研究を進めている。平成21年度には、昨年度から引き続き共沈実験の条件検討を進めた。昨年度の結果では多くの細胞質内タンパク質が非特異的に結合している結果が得られたため、今年度は表出タンパク質のみをラベルし、A.fumigatusと結合しているラベルされたタンパク質のみが候補となるように条件の検討を行った。本条件下で共沈実験を行い、新たな受容体の探索を進める予定である。 並行して、昨年度A.fumigatusと結合することが示された血清タンパク質について検討を進めた。蛍光ラベルした血清タンパク質で解析を行った結果、A.fumigatusの分生子、膨化分生子、菌糸においていずれもこの血清タンパク質との結合が確認された。さらにこの血清タンパク質存在下においてA.fumigatusの生育が著しく阻害されることが明らかとなった。今後、本血清タンパク質がA.fumigatusの生育を阻害する分子メカニズムについて詳細に検討を進める予定である。
|