研究課題
病原性グラム陰性菌には様々なタンパク質分泌装置が存在するが、近年、明らかになった装置に6型タンパク質分泌装置(T6SS)がある。しかしながらその詳細なタンパク質分泌メカニズムやその病原性との関連、どのような病原因子を分泌しているかといったことについては未だ明らかではない。本研究課題ではこれらの点を明らかにすることを目的とし、昨年までに本研究課題において食中毒原因菌として知られる腸炎ビブリオにこのT6SSが存在することを明らかにしてきた。しかしながら病原性に関わる因子の同定はこれまでなされていなかった。そこで腸炎ビブリオ染色体上に存在するT6SS遺伝子群領域近傍にコードされるタンパク質のアミノ酸配列を詳細に検討していった結果、真核生物においてのみ存在が確認されるある種の酵素活性モチーフに相同性をもつタンパク質の存在が明らかとなった。そこでこの新規タンパク質についてそのタンパク質分泌能を検討した結果、アミノ酸配列から予想されるsecシステム依存的なシグナル配列は存在せず、またその分泌はT6SS依存的に行われていることが明らかとなった。また培養細胞を用いたtranslocation assayや免疫染色法によって、この新規タンパク質が宿主細胞内に移行していることが明らかとなり、新規タンパク質がT6SSによって宿主細胞に注入される病原因子である可能性が示唆された。さらにその新規タンパク質の分泌にはN末端領域が必要であることが部分欠損変異タンパク質を用いた分泌能試験により明らかとなった。
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