炎症組織中に炎症性細胞が集積すると、ω-3系多価不飽和脂肪由来の生理活性脂質レゾルビンが産生され、起炎性物質や炎症性細胞のクリアランスを制御して炎症を収束させることが最近報告されたが、全身性炎症反応である敗血症性ショックの病態でも実際に働いているのかどうかは不明である。従って、敗血症性ショックの場で主として働く細胞を用い、平成20年度は、(1)レゾルビンによる炎症反応の抑制について、また(2)LPS刺激したマクロファージ系、あるいは血管内皮系培養細胞が産生するレゾルビンの検出方法確立について検討を行う予定であったが、権利問題で当初用いる予定であったレゾルビンE1(RvE1)標準品が販売停止となったため、次いで10月に販売開始となった類似作用を持つレゾルビンファミリー分子、レゾルビンD1(RvD1)を用いて(1)について実験を行った。PMA処理によりマクロファージ様に分化させたU937細胞やマウスマクロファージ様RAW264.7細胞をRvD1存在下あるいは非存在下にLPS刺激し、上清中のTNF-α産生への影響を観察したところ、RvD1は弱いながらも濃度依存的にTNFの産生を抑制した。抑制作用の機序を調べるために、RAW264.7細胞へのLPS結合にRvD1が影響するかをFCMで調べたところ、RvD1は細胞へのLPS結合には影響を及ぼさなかった。また、次年度行う予定であったIn vivoの実験の予備実験としてD-ガラクトサミン負荷エンドトキシンショックモデルマウスに対するRvD1の影響を観察した。D-ガラクトサミン並びにLPS100 ngを投与したマウスにおいて、RvD1(1μg)は致死率に影響しなかった。これに関しては、投与量を含めて検討の余地があり、引き続き進めてゆく予定である。
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