研究概要 |
近年、プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptors ; PARs)は宿主由来のプロテアーゼに加えて細菌由来のプロテアーゼによって活性化または不活性化され、細菌感染に伴う炎症や免疫応答調節に関与することが報告されている。一方、緑膿菌が産生するプロテアーゼの中でもアルカリプロテアーゼやエラスターゼは病原因子として重要視されているが、緑膿菌のゲノム解析はそれら以外にも機能未知のプロテアーゼの存在を示唆している。そこで、緑膿菌由来の未知のプロテアーゼがPARsを活性化または不活性化する可能性を考え、そのプロテアーゼの精製と同定を行い、PARsに対する作用について検討した。先ず、緑膿菌臨床分離株KU2の培養上清からV型分泌装置由来の新規な分泌プロテアーゼであるLepAを、硫安塩析、陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーにより精製した。次に、PARs活性化能を評価するために、機能的なPARsを発現しないCOS-7細胞ヘヒトPARs発現ベクターをトランスフェクションし、LepAで刺激した時のNF-KB依存性プロモーターの活性化をルシフェラーゼアッセイで調べた。その結果、PAR-1,-2,-4発現ベクターをトランスフェクションしたCOS-7細胞では、LepA刺激によるNF-κB依存性プロモーターの活性化が認められた。また、PARsのN末端側細胞外領域がPARS活性化プロテアーゼであるトリプシンやトロンビンと同様の形式で切断されるかを調べるために、PARsのN末端側細胞外領域の合成ペプチドをLepAで消化した後、逆相HPLCにより解析した。その結果、LepAはPAR-1,-2,-4のN末端側細胞外領域の合成ペプチドをPAR-1,-2,-4の活性化プロテアーゼであるトリプシンやトロンビンと同様の形式で切断した。従って、これらの結果からLepAはPAR-1,-2,-4を介してNF-KBを活性化すると考えられた。
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