研究概要 |
近年、細菌由来のプロテアーゼはプロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptors ; PARs)を活性化または不活性化し、細菌感染に伴う炎症や免疫応答調節に関与することが報告されている。我々は前年度の研究において、緑膿菌が産生する新規のプロテアーゼ(LepA)を同定し、LepAがPAR-1,-2,-4を介して炎症応答を誘導することを明らかにした。本年度の研究では、LepAがPARs活性化能の他に何らかの働きを示すかについて検討した。 先ず、緑膿菌臨床分離株KU2(wt)のlepA遺伝子を相同組換えによって破壊した株(lepA^-)を作製した。次に、LepAが緑膿菌の増殖に重要なプロテアーゼであるのかを調べるために、それぞれの株をウシ血清アルブミンやウシヘモグロビンのみを炭素及び窒素源とする無機塩培地にて培養し、600nmでの濁度を経時的に測定した。その結果、lepA^-の増殖能はwtよりも低下していることが確認された。また、培養細胞に対するwtとlepA^-の毒力を解析した。wt、lepA^-をヒト単球様細胞株THP-1などにそれぞれ同じ菌数で感染させて死細胞から放出された乳酸脱水素酵素量を測定した。その結果、培養細胞に対するlepA^-の毒力はwtよりも低下していることが確認された。さらに、マウスに対するwtとlepA^-の毒力について検討した。wt、lepA^-をddYマウスの腹腔内にそれぞれ同じ菌数で感染させた場合の生存口数を観察した。その結果、感染30後の生存率はwt感染では0%、lepA^-では70%であった。また、lepA^-のLD_<50>はwtよりも約400倍の量であった。これらの結果から、マウスに対するlepA^-の毒力はwtよりも低下していることが確認された。従って、緑膿菌LepAはPARsを活性化するだけではなく、緑膿菌の増殖能と毒力の発揮にも重要な役割を担うと考えられた。
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