研究概要 |
1. 新規クラミジアワクチンの開発 細胞内寄生性細菌であるクラミジアは、上皮細胞などの感染細胞内で封入体を形成しリソゾームによる殺菌機構からエスケープする。また、IFN-γや抗菌剤により非定型的な網状体となり、宿主細胞内で遷延性、持続性感染症を呈するようになる。従ってクラミジア感染症の排除には、MIICクラス1拘束性のCD8キラーT細胞の誘導が極めて重要と考えられる。本年度は、クラミジア膜蛋白特異的CD8陽性T細胞を誘導するために、我々が近年確立したCD8陽性T細胞を効率よく誘導するユビキチン融合DNAワクチン構築を行った。ユビキチン融合クラミジア抗原ベクターを構築し、哺乳細胞由来培養細胞にトランスフェクトし、目的抗原タンパク質の発現をウエスタンブロット法により確認した。また、同様に抗原特異的免疫応答等を解析する日的で、リコンビナントタンパク質発現プラスミド構築も行い、SDS-PAGE法によりリコンビナントクラミジア抗原タンパク質の発現・精製の確認を行った。 2. PD-1/PDL-1を介したクラミジア免疫回避機構の解析 ワクチン開発において、寄生体の病原性あるいは免疫回避機構と宿主側の応答系を統合的にとらえた研究が非常に重要である。クラミジア感染におけるCD8陽性T細胞について解析を行うことで、寄生体の免疫回避機構を明らかにし、宿主防御機構からのエスケープ機構に即したワクチン開発が行えると考える。近年、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞が免疫応答を負に制御するPD-1による免疫抑制を悪用し,免疫監視からの回避に利用していることが明らかになってきた。本年度は、クラミジア感染におけるPD-1及びそのリガンドであるPD-L1, PD-L2またその他B7ファミリー分子の発現について、感染後経時的な解析をフローサイトメトリーにより行った。その結果、感染によりT細胞上のPD-1の発現は上昇していた。抗原提示細胞上にもPD-Lsは発現が確認され、クラミジアによるPD-1/PD-Lsを用いた免疫制御の可能性が示唆された。
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