劇症型溶連菌感染症臨床分離株の分泌蛋白質を調べたところ、共通して、ストレプトリジンO (SLO)の分泌量が、咽頭炎などの非劇症型感染症臨床分離株と比較して、高いことが判明した。今までの研究で、劇症型感染症臨床分離株において、二成分制御系のセンサー蛋白質であるCsrSに変異があることが分かっているが、劇症型感染症臨床分離株の中には、このcsrS遺伝子に変異がみられない株が存在することが明らかとなった。そこで、分子疫学上クローナルである劇症型溶連菌感染症臨床分離株NIHlと咽頭炎患者分離株患者K33のゲノムを比較するため、それぞれのゲノムDNAを抽出し、一塩基多型解析(SNPs解析)を行った。それぞれの株におけるゲノムの塩基配列の違いを見出した後、リシークエンスによりゲノム上の塩基配列の違いを決定した結果、劇症型溶連菌感染症臨床分離株において、共通して転写因子をコードするrgg遺伝子に変異が起きていることが判明した。劇症型溶連菌感染症臨床分離株において、どの程度この遺伝子に変異が起きているか調べるため、このrgg遺伝子を含む領域をPCRにより増幅し、塩基配列を決定した。rgg遺伝子の変異は、劇症型溶連菌感染症臨床分離株の約25%を占めていた。また、咽頭炎などの非劇症型感染臨床分離株では、3.4%しかこの遺伝子に変異が見られず、有意に劇症型感染症臨床分離株においてrgg遺伝子に変異がみられることが判明した。このことから、このrgg遺伝子の変異は、劇症型感染症に重要な役割をしていることが考えられた。
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