研究課題
これまでの研究において、劇症型溶連菌感染症臨床分離株において、csrR/csrS遺伝子以外に、rgg遺伝子に変異が起きており、この変異は、劇症型溶連菌感染症臨床分離株の約15%でみられるが、咽頭炎などの非劇症型感染臨床分離株では、3.4%しかこの遺伝子に変異が見られなかった。このことから、このrgg遺伝子の変異は、劇症型感染症に重要な役割をしていることが考えられた。rgg遺伝子の変異が、in vivoで病原性に影響を与えるか調べるため、マウスをもちいた動物実験を行った結果、rgg遺伝子に変異が存在すると、致死性が増大し、腎臓などの臓器に障害を与えることが判明した。本年度では、この遺伝子の変異によって、どのような病原性遺伝子の発現が上昇するか調べるため、咽頭炎患者分離株、劇症型溶連菌感染症臨床分離株、咽頭炎患者分離株のrgg遺伝子変異株、intactのrgg遺伝子を劇症型溶連菌感染症臨床分離株に導入した相補株からRNAを抽出し、RT-PCRを行った。その結果、rgg遺伝子に変異がある株において、細胞障害毒素をコードするslo, nga遺伝子、ストレプトキナーゼをコードするska遺伝子、コラーゲン様タンパクをコードするsclAやsclB遺伝子遺伝子の発現が上昇していた。一方、csrS遺伝子変異株で上昇していたIL-8プロテアーゼをコードするscpC遺伝子は、rgg遺伝子の変異にかかわらず発現の上昇は見られなかった。このことは、マウスへ菌を接種したときみられた腎臓の病理像の結果と一致するものであった。また、csrS変異株同様、rgg変異株においても、溶血毒素をコードするsagA遺伝子やシステインプロテアーゼをコードするspeB遺伝子の発現量が、減少していた。
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