研究概要 |
今年度は, HCV感染によるCXCR3リガンドの発現誘導機構の解析を、特に自然免疫認識受容体であるTLRの関与に着目し、in vitroにて主に解析を行った。HCVサブゲノムレプリコン細胞及び, HCV感染肝細胞株では、グラム陽性菌由来の構成壁を認識するTLR2リガンド刺激時において、IP-10の産生が著しく亢進された。また、興味深い事に、HCV特異的プロテアーゼ阻害剤の処理にて、TLR2依存的なIP-10の産生は部分的に抑制されたが、IFN□及びサイクロスポリンAの処理では、むしろIP-10の産生が促進された。 次に,TLR2のシグナル経路を介したIP-10の産生亢進機序を解明するために、TLR2リガンド刺激時における遺伝子発現変動の比較をDNAマイクロアレイにて検討した。その結果、IP-10の産生亢進機序に関与する候補分子の一つとしてCD44が同定された。実際に、CD44の発現上昇はDNAマイクロアレイ及びReal-time PCRのいずれかおいても、IP-10の産生亢進と協調している事が確認された。CD44はヒアルロン酸をリガンドとするI型膜貫通受容体であり、リンパ球の活性化に寄与することが報告されている。さらに、特異的な分解酵素により断片化された低分子量型のヒアルロン酸はTLR2依存的に炎症性シグナルを誘発することが報告されている。 今年度の知見より、HCV感染細胞では、TLR2とCD44の相互作用を介したIP-10の促進機構の関与が示唆された。
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