研究課題
HCV感染に伴う肝炎慢性化とその進行には、IP-10と呼ばれる炎症性ケモカインの産生亢進が密接に関与しており、その産生機序に自然免疫認識受容体の一つであるTLR2が関与している事が明らかとなった。さらに、その詳細な分子機序を解析したところ、I型膜貫通蛋白質であり、活性化リンパ球の遊走反応及び接着に関与するCD44分子がIP-10の産生亢進に伴う共役因子として同定された。CD44の内在性のリガンドはヒアルロン酸(HA)であり、炎症細胞や癌細胞ではその低分子量型の発現が亢進していることが報告されている。さらに、低分子量型のHAはTLR2のリガンドとして作用し、炎症性シグナルを誘発する事も報告されている。実際に、HCV感染細胞及びHCV持続複製細胞(HCVレプリコン)では、低分子量型のHA刺激に伴うIP-10の産生が亢進している事が示され、さらに、内在性のCD44の発現を抑制することでIP-10の産生が抑制された。低分子量型HAによるIP-10の産生亢進には、TLR2とCD44の相互作用が必要であるとの結果が得られたが、グラム陽性菌の類のリガンド刺激によるIP-10の産生にはCD44は非依存的であった。また、HCV感染、複製細胞や、慢性C型肝炎患者由来の肝生検を用いた解析から、HCVの複製依存的にCD44の発現が亢進している事が示された。以上の見解から、HCV感染に伴う肝炎慢性化には、TLR2とCD44の協調的な炎症性シグナルの誘発機序が関与している可能性が示唆された。
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Journal of Virology Vol 83, No 15
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