研究概要 |
本研究では、伝染性単核球症を引き起こし、バーキットリンパ腫、胃癌などの癌の原因にもなるEpstein-Barr virus(EBウイルス)のライフサイクル解明のため、特にウイルスの潜伏感染からの再活性化のメカニズムに焦点をおいて研究を開始した。このような詳細なウイルスライフサイクルの解明はウイルス拡散防止に役立つ点で意義深い研究である。 研究は全般的に順調に進行している。 我々が新規に見いだしたTORC2という遺伝子による再活性化調節については、すでに学会、および学術誌(Murata et al., J Biol Chem. (2009)284(12):8033-41)に報告した。この中で我々はEBウイルス再活性化抑制にカルシニューリン阻害剤が有効であることも示した。 このほか、cDNA ライブラリを用いたファンクショナルクローニングにより、EBウイルス再活性化に影響を与える遺伝子を網羅的に解析する実験も、順調に成果が出てきている。現在までに、およそ5x10^3個のクローンを調べ、少なくとも3つの非常に興味深い遺伝子が得られてきている。今後はこのスクリーニングを継続して、2009年12月頃までに、ゲノム全体をカバーするために十分な数のクローン(およそ5x10^4個程度)を調べ、順次詳細な解析を進める予定である。 本研究のような網羅的なスクリーニングはEBウイルスではこれまでには全く行われておらず、包括的な視点からウイルスの再活性化メカニズムを解析できることは非常に独自性が高く、インパクトのある研究となる。
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