C型肝炎ウイルスや鳥インフルエンザなど、ウイルスによる感染症問題はその解決が社会的に要請される重要な問題である。これらウイルス感染の抑制にはヒトのI型インターフェロン(IFN)応答が重要である。近年、このIFN応答の分子基盤が明らかになりつつあり、ウイルスによる感染症対策の為の重要な基礎基盤が確立されつつある。しかし、その全貌はまだ明らかになっていない。本研究では、ヒトのIFN応答に関わる分子群の探索を行い、酵母のTwo-hybrid法によるスクリーニングによって、ヒトの肺のcDNAライブラリー中から、新たにRipletと申請者が名付けた分子を単離した。RipletはRNAウイルス感染時にそのRNAを認識する細胞質内受容体のRIG-I分子と結合すること、また、結合することによりRIG-I分子をユビキチン化することで、RIG-I分子を活性化することを明らかにした。Ripletを過剰発現させると、水泡性口内炎ウイルス(VSV)感染時のIFN応答が増強されうこと、またRiplet遺伝子の発現をsiRNAを用いて減少させるとIFN応答が減少したことから、Riplet分子がウイルス感染時にIFN応答においてRIG-Iを活性化させることで、IFN産生のシグナルを増強することを解明した。 RIG-IはC型肝炎ウイルスやインフルエンザの認識に関わることから、本研究で明らかにしたRiplet分子が、これらC型肝炎ウイルスやインフルエンザの感染時の工FN応答に関与することが期待され今後の研究が進展することが期待される。また、現在、Ripletノックアウトマウスを作成している。ヒトでは最近になって、Ripletは遺伝病の原因遺伝子として同定され、ヘテロ欠損で発達や学習能力に異常がでることが知られている。現在作成中であるRipletノックアウトマウスも、90%程度の効率のキメラ率を持つマウスは同腹の個体と比較し発達に異常が観られることから、Ripletノックアウトマウスが、ウイルス感染時のIFN応答に加えて、ヒト遺伝病のモデルマウスとなることが期待される。
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