本研究計画では、DCIR-KOマウスを用いて免疫制御におけるDCIRの機能解析を行い、自己免疫及びアレルギー疾患におけるDCIRの役割を解明することを目的とした。具体的には、DCIRリガンドの同定、シグナル伝達経路の解明を目指すとともに、自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、気道過敏症(AHR)などの疾患モデル系を用いて各種免疫疾患におけるDCIRの役割を解析した。本年度は糖鎖アレイデータの解析及び糖鎖結合アッセイにより、内在性DCIRリガンドの同定に成功した。また、DCIR-KOマウスのC57BL/6J、BALB/c背景への戻し交配をそれぞれ12世代まで進め、加齢とともに自然発症する自己免疫疾患の病態解析を進めた。加齢に伴って認められる関節の強直はRAG-KOマウスとの2重欠損マウスで観察されないことから、加齢時の骨代謝異常には免疫系の関与があることが示唆された。若齢のDCIR-KOマウスではコラーゲン誘導関節炎(CIA)の系において、DCの増殖とTh17型及びTh2型免疫応答の亢進が観察される。そこでTh17依存性の自己免疫疾患モデルであるEAEの系を用いて解析を行った結果、DCIR-KOマウスにおいて重症度の有意な増悪化が認められた。また、CIAにおけるTh2型免疫応答の亢進は調節的な役割を果たしていることが推察されるが、一方でDCIRがアレルギー疾患において重要な役割を担っていることが示唆される。そこで、DCIR-KOマウスを用いて実験的喘息モデルであるAHRを誘導した結果、肺胞洗浄液中の浸潤細胞数の有意な増加と抗原刺激によるTh2サイトカインの顕著な産生亢進が認められ、DCIRがアレルギー疾患においても重要な役割を果たしていることが示唆された。これらの結果から、DCIRを標的とした各種免疫疾患に対する新規治療法開発の可能性が示唆された。
|