研究概要 |
胸腺上皮細胞は通常の上皮細胞と異なり三次元網工構造を形成しT細胞分化に特化した特殊な上皮細胞である。申請者らはこれまでに、胸腺上皮細胞の一部が上皮細胞間をシールするタイトジャンクション(TJ)を形成しないにもかかわらず、TJ構成膜蛋白質であるクローディン(Cld)-3,4がAireという胸腺内で組織特異抗原に対する自己寛容に必須の分子を発現する特殊な胸腺上皮細胞に発現することを明らかにしている。本研究ではその機能を明らかにするためノックアウトマウスの作製を行ない、Cld3 KO, Cld4 KO各々単独KOの作製に成功した。現在これらのマウスの胸腺における表現型解析(胸腺組織構築、Aireの発現、胸腺細胞分化の異常の有無等の解析)を行っている。さらにダブルノックアウト作製のための交配に着手した。これら2つの遺伝子間はゲノム上で40Kbしか離れておらず、掛け合わせは続けているものの現在の所ダブルノックアウトマウス個体は得られていない。そこで、新たに2遺伝子を一度にdeleteするベクターを設計し、このベクターを用いたKOマウス個体の作製に着手した。Recombinationが起こる確立は極めて低いと予想されるが、上手くいけば来年度中にKO個体が得られる予定である。胸腺は上皮細胞で構成される唯一のリンパ造血系組織であることは古くより認識されてきた事実であるが、T細胞が胸腺という上皮組織でのみ分化する意義についてはよく分かっていない。クローディンを初めとした上皮特異的な分子のT細胞分化における機能を個体レベルで解明することにより、こうした古くからの免疫学的・発生学的に重要な疑問が分子レベルで明らかになるものと期待される。
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