肺移植後の慢性拒絶反応である閉塞性細気管支炎(BO)は肺移植後の長期生存率が他の臓器移植より低い要因であるが、BOに関してはいまだに不明な部分が多い。今までは異所性気管移植モデルがBOの研究に多く用いられてきたが、気管内腔に空気は通過せず、臨床肺移植とかけ離れており、BOのモデルとしては不完全であった。今回、申請者が開発した同所性マウス肺移植モデルを用いて、拒絶反応における気道上皮とアポトーシスの関係について研究した。同系移植後の肺はほぼ正常な肺であったが、異系移植後の肺は7日目でも強い拒絶反応を呈していた。しかし、異系移植後から28日目の肺は壊死状で強い急性拒絶反応が存在したにもかかわらず、気道上皮はよく保たれていた。この気道上皮を分析したところ、気道上皮にはBc1-2が強く発現しており、拒絶反応に対する気道上皮の抗アポトーシス作用により気道上皮が保たれていたことが示唆された。さらに拒絶反応とアポトーシスの関係を分析するため、レシピエントにBc1-2トランスジェニックマウスを使用したが、Bc1-2トランスジェニックマウスでは肺は強く拒絶されており、これはCD8陽性T細胞のアポトーシスが抑制され、拒絶反応を抑制しなかったためであると考えられた。さらに、移植肺内のCD8/CD4陽性T細胞比は拒絶反応と強く相関しており、肺移植後の拒絶反応および免疫寛容にCD8陽性T細胞が強く関与していると示唆された。また、レシピエントにBc1-2トランスジェニックマウスを用い、免疫抑制剤を投与した群では、予想以上に強い拒絶反応が血管周囲および気道周囲にみられたが、病理組織学的分析では気道上皮細胞のアポトーシスに大きな変化はみられなかった。今後はさらに研究を重ね、BOモデルを確立し、またBOの研究の発展に貢献する必要があると思われる。
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