オートファジーは真核細胞に普遍的に存在する細胞内分解系の一つであり、ほ乳動物においては、飢餓適応・細胞内品質管理・細胞内病原体の排除など様々な生理的役割を果たすことが近年急速に明らかとなってきた。一方で、このような多様な場面でオートファジーが適切に機能するための制御機構については未だ不明な点が多い。私は、これまでオートファジーとの関連が全く知られていなかったTAK1-bindingproteins 2/3 (TAB2/3) とBechn1 (オートファジー関連遺伝子) が結合することを見いだし、これに基づいて、「オートファジー制御におけるTAB2/3の役割とその作用機序」および「自然免疫系とオートファジーの相互制御機構」の解明を目指して研究を行っている。現在までに、1) TAB2/3を過剰発現させると内在性p62 (オートファジーによって分解される内在性基質の一つ) のタンパク量が増加し、逆にTAB2/3をノックダウンするとp62の量が減少する、2) TAB2/3を過剰発現させると、EGFP-ATG5 (隔離膜のマーカー) の発現がドット状になる、3)TAB2/3はEGFP-ATG5のドットと共局在する、という結果を得ている。なおこれらの実験は全て栄養豊富な培養条件下で行った。以上より、「TAB2/3は基底レベルのオートファジーを負に制御しており、その抑制作用は隔離膜の伸長あるいはオートファゴソームの成熟を阻害することによる」と考えられる。さらに、TAK1ノックアウトMEFを用いて、「TAB2/3によるオートファジー制御はTAK1非依存的である」ことを明らかにしている。本研究の成果は、未だ謎の多いオートファジー制御機構の理解に貢献するものであり、将来、神経変性疾患・肝障害などオートファジー関連病態の発症機序の解明や治療法の創出につながる重要な知見の一つになると考えられる。
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