研究概要 |
オートファジーは真核細胞に広く存在する細胞内分解系の一つであり、ほ乳動物においては、飢餓適応・細胞内品質管理・細胞内病原体の排除など様々な生理的役割を果たすことが知られている。しかしながら、このような多様な場面でオートファジーが適切に機能するための制御機構については未だ不明な点が多い。私は、これまでに、炎症性サイトカイン受容体やToll様受容体の下流で働くアダプター分子TAK1-binding proteins 2/3(TAB2/3)が、Beclin1(オートファジー関連遺伝子)と複合体を形成すること、TAK1非依存的に基底レベルのオートファジーを負に制御することを見いだした。今年度は、まず、オートファジーが自然免疫系に果たす役割を調べるため、1)野生型およびATG5欠損マウス胎児繊維芽細胞(MEF)を用いた、VSVウイルス感染によるI型インターフェロン産生量の比較(IFN-alpha,-betaの発現量をRT-PCR法にて測定)、2)Beclin1をノックダウンしたRAW264.7マウスマクロファージ様細胞のLPS応答性の解析(IL-6の産生量をELISA法にて測定)を行った。その結果、オートファジー活性の有無に関わらず、ウイルス感染やLPS刺激に対する応答に有意な差は認められなかった。次に、TAB2/3によるオートファジー制御の生理的意義を明らかにするため、アミノ酸飢餓低酸素、Etoposide、TRAILなどの刺激に対するTAB2/3の過剰発現の影響を調べたところ、少なくともEtoposideやTRAILによって誘導されるオートファジーをTAB2/3が抑制できること、細胞をEtoposideで処理すると内在性TAB2がULK1依存的にリン酸化されることがわかった。本研究の成果は、未だ謎の多いオートファジーの制御機構の理解に貢献するものと考えられる。
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