研究概要 |
平成20年度の研究計画に基づき、以下の点を明らかにした。T細胞の活性化におけるLAPTM5の役割について、1、LAPTM5はT細胞抗原受容体(TCR)の発現を制御していることを明らかにした。2、LAPTM5欠損T細胞が、野生型T細胞と比較して、抗原刺激に対し過剰に応答することをin vitroの解析で示した。3、LAPTM5欠損マウスにおいて遅延型アレルギー反応が亢進することを明らかにした。4、LAPTM5はT細胞上のTCRの発現量を、TCR複合体の構成因子であるTCRC鎖と物理的に相互作用し、その蛋白分解を促進することで調節していることを明らかにした。5、このTCR制御機構には、LAPTM5のPYモチーフおよびユビキチン結合領域が重要であることを示した(以上は、immunity 29, 33-43, 2008に掲載)。また、6、既知のTCR発現制御分子、Cb1およびSLAPとの機能的相互関係を明らかにするため、それぞれの分子との二重欠損マウスを樹立した。7、T細胞におけるLAPTM5の機能をより明確にするために、T細胞特異的に発現するLAPTM5トランスジェニックマウスを作製した。 LAPTM5がT細胞表面のTCR発現量を調節し、T細胞の過剰活性化を抑制してアレルギー反応や自己免疫反応を抑える機能を持つことが判明したことから、LAPTM5の欠損により自己免疫疾患が誘発される可能性が考えられる。そこで次年度においては、LAPTM5欠損マウスの長期飼育下における自己免疫疾患の自然誘発の観察を行う。LAPTM5欠損マウスにおける自己免疫疾患の発症の有無を検討することにより、自己免疫疾患発症のメカニズムの解明に大きく貢献でき、さらに自己免疫疾患の新たな治療法開発につながることが期待される。
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