HCV感染ヒト肝臓組織ではHCVが持続的に複製し、特異的CTLが誘導されているにも関わらず、ウイルス感染細胞が完全には排除されないことが知られている。このことから持続感染が成立する理由の一つとして、宿主側がHCVに対し、何らかの機構で免疫応答が惹起できない状態、すなわち免疫寛容状態になっていることが示唆される。そこで我々は新規HCV持続感染モデルマウスであるCre/loxP/HCV-MxCre Tgマウスを用いて、これまで困難とされていたHCVの持続感染化と宿主の免疫応答の関係を解析した。マウス脾細胞において、持続感染化に関わる免疫抑制性分子であるPD-1およびPD-L1の発現量をFACSにより解析したところ、PD-L1の発現量がHCV遺伝子発現後8週目では著しく減少した。また、マウス肝臓内におけるCTLA-4およびFoxP3のmRNA量を検索したところ、HCV遺伝子発現誘導後、いずれも一過性に上昇することがわかり、持続感染化とそれら免疫抑制性分子の関与が示唆された。さらに我々はHCV遺伝子組換えワクチニアウイルス(HCV-RVV)株を樹立し、Cre/loxP/HCV-MxCre Tgマウスを用いて、治療ワクチンとしての効果を検討した。HCV-RVVはHCVの構造蛋白質を主に発現するCN2、非構造蛋白質を発現するN25、全蛋白質を発現するCN5を用いた。その結果、HCV-RVVは非構造蛋白質を発現するN25接種群において、マウス肝臓内のHCV蛋白の減少と肝臓の索状構造や肝細胞の状態など、形態学的な異常の正常化が認められた。これらの知見をもとに、免疫寛容の解除によるウイルスの排除及び肝炎抑制によるC型慢性肝炎の新たな免疫治療の方向性を示すことができると考えている。
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