診療参加型実習の長所を生かすためには統一基準で実習経験を評価することが必須である。平成20年度にはweb入力によるオンライン実習記録の構築と評価を試み、オンライン実習記録システムによって内科各科で行われている診療参加型実習の質的・量的な客観的評価がリアルタイムで可能となった。しかし、入力の煩雑さが指摘されたため、平成21年度にシステムの再構築を行った。それにより、入力数は平成20年度20名より35名に増加し、より正確な解析可能となった。また、医療面接の平均経験数の増加(平成20年度5.58人、同21年度11.9人)、身体診察の平均経験数の増加(平成20年度4.5人、同21年度10.8人)などの結果が得られた。本研究によって、主要徴候を経験するための外来実習の重要性が再認識される一方、医療面接ではシステムレビューが行われる頻度が少なく、身体診察の経験では直腸診を経験する学生が殆どいないことなどが明らかとなった。これらを受けて外来実習の枠の増加、シミュレータを用いた直腸診の実習の開始など、カリキュラムの改編が行われる結果となった。 また、診療参加型実習の成果を評価する方法として、本研究では平成20年度に診療参加型実習を経験した学生が研修医になる前の教育として看護師とのチームシミュレーション実習を行い、診療参加型実習の成果が持続的なものであるかを評価した。その結果、クリニカルクラークシップで習得可能な臨床手技もシミュレーション実習によって新たな気づきを得ることが多く、実技のトレーニングは一定のインターバルをおいて繰り返し行う必要性があること、また、チームトレーニングによって一層実践に近い臨場感が得られることが示唆された。岡山大学では平成22年度より診療参加をさらに実質化するための新カリキュラムを導入した。今後は、本研究で開発したwebシステムを用いて、新カリキュラムの評価を行うことも予定している。
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