研究概要 |
コミュニケーション能力の低下など医学生の「情意・技能面」に関する能力の低下は, 現在われわれが直面する問題の一つである。こうした問題は, 入学後の教育によっても改善が難しく, したがって入学時での選別の必要性が叫ばれている。本研究では, 高知大学医学部が行う態度・習慣領域評価型の入試(AO入試)のデータをもとに, 入学者の動向を在学中, 卒業後まで長期にわたり継続的に追跡調査・解析し, 態度評価の評価項目と評価尺度の妥当性を検証するものである。本年度は, AO入試実施初年度である平成15年度入学者が医学科6年間の全課程を修了する年である。そこで, 平成15年度AO入試入学者の全履修科目成績, 学生間ピア・レヴューによる態度・習慣領域評価スコア, 共用試験(OSCE, CBT)成績, 医師国家試験合格率を, 他の選抜方式(教科型(英語・数学)方式, 問題解決能力試験(KMSAT)方式)による入学者群と比較・解析した。その結果, 医師国家試験合格率を除くいずれの事項においても, AO入試による入学者群が, 他の選抜方式の入学者群に比較し優れていることが明らかとなった。医師国家試験合格率については, 平成21年3月末の合否結果を受け, ただ今解析中である。態度評価項目については, 入試時と入学後の学生間ピア・レヴュー時では同一の項目を使用するのが困難であることが明らかとなってきている。平成21年度については, 臨床研修先での評価も視野に入れる予定であるため, 評価項目を再検討し, すべてに共通して利用できる評価項目・尺度の確立を目指したい。
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