研究概要 |
コミュニケーション能力の低下など医学生の「情意・技能面」に関する能力の低下は,現在われわれが直面する問題の一つである。こうした問題は,入学後の教育によっても改善が難しく,したがって入学時での選別の必要性が叫ばれている。本研究では,高知大学医学部が行う態度・習慣領域評価型の入試(AO入試)のデータをもとに,入学者の動向を在学中,卒業後まで長期にわたり継続的に追跡調査・解析し,態度評価の評価項目と評価尺度の妥当性を検証するものである。 今年度は,平成16年度AO入試入学者について,6年間の動向をさらに詳細に解析した。結果,学生間ピア・レヴューと選抜時態度評価の相関は2年次(r=0.13)よりも6年次スコア(r=O.69)で,正の相関が高く顕著となった。また,入試選抜ごと(AO,教科型方式,問題解決能力試験方式)に比較した結果,2年次ピア・レヴュースコアはAO入試入学者群が教科型方式群に比較し有意に高いことが明らかとなった(P<0.01)。ピア・レヴュー各項目においては,「協調性」「信頼性」「整理・整頓能力」「医師としての適性」「同僚であることを希望」でAO-教科型方式間に有意差が,「コミュニケーション能力」「挨拶」でAO-教科型方式,AO-問題解決能力試験方式間に有意差が認められている。6年次スコアの各項目においては,「コミュニケーション能力」「挨拶」でAO-教科型方式間に有意差が,「協調性」「コミュニケーション能力」「整理・整頓能力」「挨拶」でAO-問題解決能力試験方式間に有意差が認められている。2年次結果に比較し6年次ではAO-教科型方式間における有意差があまり認められない結果となった。教科型方式においては,留年・退学者が他選抜に比較して多く見られ,これらデータを6年次解析において排除したことが影響していると考えられる。臨床研修先での評価も含め検討し,解析を進めたい。
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