研究概要 |
コミュニケーション能力の低下など医学生の「情意・技能面」に関する能力の低下は,現在われわれが直面する問題の一つである。こうした問題は,入学後の教育によっても改善が難しく,したがって入学時での選別の必要性が叫ばれている。本研究では,高知大学医学部が行う態度・習慣領域評価型の入試(AO入試)のデータをもとに,入学者の動向を在学中,卒業後まで長期にわたり継続的に追跡調査・解析し,態度評価の評価項目と評価尺度の妥当性を検証するものである。 今年度は,平成17年度,平成18年度AO入試入学者について,6年間の動向を解析した。平成17年度入学者における2年次ピア・レヴュースコアでは,AO入試入学者が問題解決能力試験方式入学者に比べ有意に高い結果となった(p<0.017)。ピア・レヴュー各項目では,「整理・整頓能力」「挨拶ができる」の2項目において,AO-教科型方式,AO-問題解決能力試験方式間に有意差が認められた。しかしながら6年次ピア・レヴュースコアにおいては,AO入試入学者と教科型方式,問題解決能力試験方式間には有意差は認められなかった。学生間ピア・レヴューと入試選抜時態度評価の相関は,2年次,6年次とも相関は認められなかった。 平成18年度入学者におけるピア・レヴュースコアでは,平均値,分布ともにAO入試入学者が他の選抜方式入学者に比べ高い傾向が見られたが,有意差が認められるまでには至らなかった。学生間ピア・レヴューと入試選抜時態度評価の相関についても,2年次,6年次とも相関は認められなかった。 平成15年度~18年度AO入試入学者について調査・解析を進めてきたが,AO入試入学者が他選抜入学者より優れる傾向にあり,AO入試における態度評価の妥当性が示される結果となった。
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