研究概要 |
この調査研究の目的は、介護職員が少なからず感じている「疲労」を主観的な方法からだけでなく、客観的な方法でかつ簡便に測定する方法について検討することと、介護職員の疲労実態を調査することで、施設介護職員の施設入所者へのサービス低下防止、向上につなげられるようにすることである。 対象者は施設介護男性職員11名(29.8±7.6歳)とした。方法は、対象者に夜勤務前後及び日勤勤務前後において(1) Visual analog scale (VAS)、(2)唾液アミラーゼ量(Am)、(3)フリッカーテスト(CFF)、(4)自律神経評価(HF、LF/HF)(5)朗読音声録音を測定を行った。朗読音声については音声カオス解析ソフトを使用し、採取したデータから数値データ(音声指数)に変換した。これらを元に音声指数と疲労パラメーターとの関連形について検討した。 その結果、VASにおいては、夜勤及び日勤前よりも勤務後において有意な差が認められた(paired t-test, p<0.05)。しかしながら、Amは日内変動の影響が大きく午前中において低く、午後に高い傾向が見られた。CFFは夜勤後に夜勤前と比較し有意に低下し(paired t-test, p<0.05)、夜勤帯の睡眠時間の影響が大きい可能性が考えられた。音声指数は、一定の傾向が認められなくVAS、Am、CFF、及びHF、LF/HFとの間に、有意な相関関係は認められなかった。 今回の結果より、自覚的な疲労感は感じているものの生理的指標及び音声指数による疲労状態の測定には至らなかった。今後の課題として、音声解析方法の検討と疲労のパラメーターの設定が挙げられる。
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