本研究「アジアの高齢者の終末期医療をめぐる事前指示に関する国際比較研究」では、日本、シンガポール、台湾、韓国の終末期医療の現状把握と高齢者の終末期ケアの意思決定に関連するリビングウィルについて、現状と課題を明らかにし、わが国の終末期医療をめぐる事前指示について検討することである。 平成22年度は、韓国、台湾、中国のリビングウィルに関する法律や高齢者の終末期ケアの事前指示に関する文献収集、および生命倫理に関する各国の法律や国家委員会について、現地および日本国内で調べた。 文献調査によれば、韓国ではシンガポールや台湾のような、アドバンス・ディレクティブに関する法律はない。本調査の直接の研究対象国ではなかったが、中国も文献調査をしたところ、アドバンス・ディレクティブは法制化されていなかった。これらは、緩和ケアの発展、文化、宗教などとも大きく関連していることが推測された。特に、家族関係、ひいては家族内における意思決定がどのように行われる傾向があるのかと関連している。また昨今、わが国でも大きな問題となっている、延命治療の中止や不開始をめぐる議論がある。アジアの国々の新聞などを調べてみると、延命治療の中止や不開始をめぐる問題が顕在化している。アドバンス・ディレクティブと延命治療の中止や不開始については、関連性があるので、今後は各国の一般国民がどのような意識をもっているかを、文献やヒアリングで調査する予定である。
|