未曾有の高齢者社会にあるわが国では、医療施設や療養の場において、高齢者の増加はますます予想され、高齢者の終末期医療の意思決定やその支援は、高齢者を取り巻く諸問題のうちで重要な課題である。高齢者に限らず、現在わが国においては、厚生労働省による終末期医療の方針手続きをめぐる初の指針などが出され、終末期医療をめぐり関心が向けられている。 そこで本研究「アジアの高齢者の終末期医療をめぐる事前指示に関する国際比較研究」では、(1)医療現場での終末期医療をめぐる事前指示の提示状況や課題点を抽出し、さらに、(2)日本及びアジア(特に台湾、シンガポール、韓国)の高齢者を対象に、フォーカスグループインタビュー調査を実施し、高齢者が終末期医療の希望の表明方法や意思決定のあり方について、どのように考えているのかを明らかにする。(1)と(2)をふまえて、わが国の医療現場において、どのようなリビングウィル(判断能力のある成人が将来判断能力を失ったときに備えて、自分に行われる医療行為に対する意向を前もって文書によって、意思表示すること)が、適用可能であるかについて、書式の面を含めて具体案を提示することを最終目的とする。
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