本研究では医学生の臨床医として身につけるべき能力(臨床能力)を伸ばす新教育法を能力測定法を含め開発する。臨床能力は総合的判断能力を基に構築されると考えられている。よって平成20年度では、実施計画における「総合的判断能力の教育法開発」「総合的判断能力評価法の信頼性、妥当性解析」を実施した。 総合的判断能力の教育法開発は、Team-based leamlng(TBL)テユートリアルを医学部第4学年を対象に平成20年6月、平成21年1月に実施した。本教育法は、臨床における総合判断能力を高めるため、試験と討論を組み合わせ、個人と集団での学習を交互に実施する。またテユーターによる講義で、個人または集団の疑問点を明らかにするのが特徴である。本法導入の有無で、総合的判断能力が変化したかを検討するため、平成19年度の本学4年生と試験の結果を比較した。試験は申請者らが開発している臨床問題解決能力試験(P-SAT)を使用した。19年度に比べ20年度の4年生は、P-SATの学年平均が高かった。これらの結果から総合的判断能力の一部は、BLテユートリアルによって影響を受けることが明らかとなった。 総合的判断能力評価法の妥当性、信頼性および再現性を平成17年度〜平成20年度の4年生のP-SAT結果を解析した。妥当性はPBLテユートリアルのテユーターによる学生評価との相関を求め、両者にわずかな相関性が認められた。信頼性はP-SATの問題を出題の狙いで分類し、分類された問題間での信頼性が認められた。さらに各年度の平均点に差がなかったことから、再現性が認められた。 TBLテユートリアルは、学生の臨床能力を向上させ、その効果を測定できるP-SATの有用性が一部確認できた。この結果は医学生の臨床能力向上に大きな影響を与えると考えられる。
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