研究概要 |
申請者は、アルツハイマー病患者においてアセチルコリン神経系の低下だけでなく、NMDA受容体機能の低下が惹起していることに着目し、NMDA受容体活性化を指標として認知機能改善効果を有する治療薬の確立するために、これまで研究を行ってきた。申請者の研究により、ピロリドン誘導体であるnefiracetamが、ニコチン性アセチルコリン受容体賦活作用だけでなく、NMDA受容体賦活作用を有していることを見出し、特にNMDA受容体の神経毒性に影響を与えないグリシン結合部位へ作用し、認知機能を亢進することを見出した。本研究では、その詳細な細胞内機序を解明するために、NMDA受容体の下流に存在し、認知機能と密接に関与しているカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)の活性化に着目したが、その結果、nefiracetamはCaMキナーゼIIを濃度依存的に活性化し、認知機能を亢進していること(Morigucbi et al., J. Neurochem. 2008)、さらに神経変性疾患のモデルである嗅球摘出マウス(OBXマウス)において、nefiracetamはCaMキナーゼIIの活性化を誘発する一つの細胞内機序として、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR5)の活性化を部分的に引き起こすことを明らかとした(Moriguchi et al., J. N eurochem., under revision)。本研究より、新しいアルツハイマー病治療薬の細胞内機序として、CaMキナーゼIIの活性化が重要であることが明らかとなり、今後、より詳細な解析を検討する予定である。
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