研究概要 |
申請者は、アルツハイマー病患者において機能低下が報告されているグルタミン酸機能、特に、NMDA受容体に着目し、その賦活作用により認知機能の亢進を導く治療法の解明について追究した。その結果、既に米国でアルツハイマー病治療薬として承認を受け、実際に患者に適応されているGalantamineの新しい作用機序として、細胞内でカルシウムと結合し、認知機能の密接に関与しているカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)の活性化を介したNMDA受容体賦活作用の亢進を見出した(Moriguchi et al., Hippocampus, 2009)。また、申請者が注目しているNootropicsでは、Nefiracetamが神経変性疾患のモデルマウスである嗅球摘出マウス(OBX)において機能低下が認められているNMDA受容体およびCaMキナーゼII活性に対して(Moriguchi et al., J.Neurochem.2006)、有意な改善作用を有することを見出した(Moriguchi et al., J.Neurochem.2009)。さらに、シナプス間隙におけるNefiracetamによるグルタミン産遊離には、ニコチン生アセチルコリン受容体のサブタイプであるα4β2型受容体を介して促進することも同様に見出した(Moriguchi et al., Neuroscience, 2009)。本研究の結果により、これまで着目されてこなかったNMDA受容体賦活作用およびCaMキナーゼII活性化による新しいアルツハイマー治療法を提唱できたと考えている。今後、この仮説をより実証するために詳細な検討を行う予定である。
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