研究概要 |
抗酸化作用を加味したメタボリックシンドローム治療に対する新たな治療戦略を提案するために, メタボリックシンドローム改善薬として臨床使用されている降圧薬のプレイオトロピックエフェクトとしての抗酸化作用の解析を行った。 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI), アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB), およびカルシウム受容体遮断薬(CCB)について, 健常人および血液透析血清を用いて酸化アルブミンによる抗酸化能評価を行ったところ, ACEIであるカプトプリル, ARBであるオルメサルタン, バルサルタン, CCBであるシルニジピンにおいてアルブミン酸化度の抑制が観察された。次に, 過酸化水素による酸化反応に対する効果をアルブミン指標として評価したところ, オルメサルタンおよびCCBのシルニジピンにおいて抗酸化作用が認められた。一方, 活性酸素種の1つであるスーパーオキシドに対するラジカルスカベンジ能をESRにて評価したところ, テモカプリルにおいて若干の抑制が観察された。これらの結果から, オルメサルタン, テモカプリルおよびシルニジピンにおいて作用するラジカル種は異なる可能性が考えられるが, 抗酸化作用を有していることが示唆された。そこで, 5/6腎臓摘出ラットを作成し腎不全に対する臓器保護効果及び抗酸化作用を, RA系阻害薬であるオルメサルタンおよびテモカプリルで比較を行った。腎不全ラット作成後, 8週間にわたり両薬剤を経口投与したところ, どちらの薬物においても腎不全の進行が抑制されたが, オルメサルタン投与群において有意な酸化ストレスの改善が認められた。(投稿準備中) この結果は, 申請者が先に報告した結果と一致しており, 抗酸化作用を有する薬剤の使用が, 病態の進行を抑制することが示された。
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