アストロサイトは、神経細胞を取り巻く環境の維持・調節に重要な働きをしている。また、活性化アストロサイトは虚血中心部の境界域(ペナンブラ領域)に集結することが知られている。一方、家族性パーキンソン病(PD)の原因遺伝子PARK7として同定されたDJ-1が、酸化ストレス下ではアストロサイトにおいてその発現が増加することが示唆されている。そこで、アストロサイトのDJ4機能を解析するために、H_2O_2中でアストロサイトを培養した。その結果、H_2O_2濃度依存的にアストロサイトからDJ-1が分泌された。次に、DJ-1の抗酸化作用を解析するため、SH-SY5Y細胞およびDJ-1ノックダウンSH-SY5Y細胞を用いて、H_2O_2存在下、リコンビナントDJ-1タンパク質を処置した。その結果、DJ-1タンパク質を同時投与したSH-SY5Y細胞の生存率は増加し、さらに、酸化ストレスに対して脆弱性を示すDJ-1ノックダウン細胞の生存率も顕著に増加した。そして、electron spin resonance (ESR) によりDJ-1タンパク質の直接的なヒドロキシルラジカル捕捉作用を解析したその結果、顕著な補足作用が確認された。 さらにin vivo脳における解析として、中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルラットを用いて、虚血脳におけるアストロサイトおよびDJ-1の局在を解析した。その結果、非虚血側と比較すると、ペナンブラ領域ではアストロサイトが活性化しており、DJー1の免疫反応性がアストロサイトの内部および周辺部で増大していた。以上より、MCAOモデルの線条体ペナンブラ領域において、アストロサイトのDJ-1合成および放出が亢進されていることが示唆された。 以上の結果より、アストロサイトを用いたDJ-1の脳内への送達や分泌が脳虚血やPDなどの酸化ストレスにより引き起こされる疾患の新たなターゲットになることが期待される。
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