内因性オピオイドベプチドであるプレオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子が、鎮痛薬感受性個人差やアルコール依存脆弱性に関与していることを先行研究により見出したため、本研究計画においてPOMC遺貴子多型が遺伝子発現に与える影響についての解析を行った。POMC遺伝子の5'flanking領域に位置する目的遺伝子多型が、POMC遺伝子の発現若しくは機能に影響を及ぼす原因である遺伝子多型か明らかにするため、ヒト遺伝子検体において転写開始点から約3.5 kb上流領域の全塩基配列を決定し、周辺遺伝子多型の同定及びこの遺伝子多型を含む連鎖不平衡領域を決定した。この遺伝子多型を含む連鎖不平衡領域の5'末端は転写開始点から約2 kb上流であることを同定できたが、3'末端は転写開始点より下流に存在することが明らかとなったため、現在exon 1及びintron 1の遺伝子多型を同定している。翻訳開始点がexon 2にあることから、この連鎖不平衡領域はPOMC遺伝子の発現に影響を与えると予想される。そのため、3'末端を同定した後にこの連鎖不平衡領域をクローニングし、レポーターassyにより発現制御解析を行う予定である。また、AEI解析に用いる、POMC遺伝子の翻訳領域に位置する遺伝子多型14箇所の中でminor allele頻度が高い遺伝子多型は、exon 3に位置する遺伝子多型であることを明らかにしている。現在、海外のbrain bankに遺伝子検体の供与を依頼しており、検体が届き次第目的遺伝子多型及びAIE解析に利用するexon 3の遺伝子多型の遺伝型を決定し、AIE解析を進める予定である。本研究により、in vivo及びin vitroの両面からPOMC遺伝子多型の遺伝子発現制御機構を明らかに出来ると考えられる。
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