内因性オピオイドペプチドであるプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子が、鎮痛薬感受性個人差やアルコール依存脆弱性に関与していることを先行研究により見出したため、本研究計画においてヒトPOMC遺伝子多型が遺伝子発現に与える影響についての解析を行った。ヒトPOMC遺伝子の5^'flanking領域に位置する目的遺伝子多型が、POMC遺伝子の発現または機能に影響を及ぼす原因であるかを明らかにするため、exon 1-3まで約8kbの全塩基配列を決定し、この領域の全遺伝子多型(MAF>0.01)の同定及び目的遺伝子多型を含む連鎖不平衡領域の決定を行なった。Intron 2及び3において、dbSNP databaseに登録されていない遺伝子多型を複数同定した。連鎖不平衡解析の結果、目的遺伝子多型を含む連鎖不平衡領域は形成されておちず、この遺伝子多型自身が鎮痛薬感受性などに直接関与していると考えられた。そこで、この遺伝子多型を含む翻訳開始点から3kbの領域をクローニングし、発現調節解析用ベクターを作製した。また、AIEに用いる翻訳領域に位置する遺伝子多型はexon 1及び2には存在せず、exon 3に2箇所見出した。この2箇所の遺伝子多型は、目的遺伝子多型から約9kb下流とかなり離れた位置にあるが、MAFがそれぞれ0.344及び0.354と高いため、AIE用として有用であると考えられる。今後は、構築したべクター及び翻訳領域に見出した遺伝子多型を用いて目的遺伝子多型のPOMC遺伝子発現に対する影響を解析する予定である。本研究により、in vivo及びin vitroの両面から、POMC遺伝子多型の遺伝子発現調節機構を明らかに出来ると考えられる。
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